美術に関してのメモ、etc

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インポッシブル・アーキテクチャーは、建築家の夢

2019/12

埼玉、新潟、広島、大阪の順で建たなかった建築ばかりを集めた「インポッシブルアーキテクチャー」展が巡回展示されています。

1月7日から大阪の国立国際美術館で3月15日迄開催されていますので、関西近郊の方はぜひ美術館をおとずれてはいかがでしょう。

大阪で実現しなかったプランとしては、安藤忠雄の「アーバンエッグ」中之島公会堂改装案が展示されており、とても素敵な空間になっています。

今回は、この展示について紹介できればと思います。

国内、海外には芸術作品と同じくらい素晴らしい建築がたくさん現存しています。しかし私達が目にしているのは建っているもので、その背景には完成には至らなかった素晴らしい構想がたくさん存在しました。

2020年の東京オリンピックに向けて、新国立競技場も設立されました。現在の建物は 隈研吾の設計ですが、コンペでは、ザハ・ハディッドのデザインが採用となっていました。しかしながら最終段階で変更になったのは記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

コンペで選ばれなかった作品、技術的に難しかったもの、経済的、社会的な要因や制約で実現できなかった案、実現よりも未来に向けて想像された建築案・・・などなど。

そういう作品には、作者の理想や思考がより明確に感じられるかもしれません。

しかしながら「建っていない」のですから私達は知ることができないのです。

今回、美術館での展示が巡回されていますので、この機会に建築の素晴らしさや可能性を感じられてはいかがでしょうか。

約40人の国内外の建築家の作品を、模型・資料・書物・映像を通じて知ることができます。

建築家の素晴らしいドローイングや何気ないスケッチ、また岡本太郎会田誠の作品も紹介されており建築に興味ある方もアートに興味ある方もどちらも楽しめるようになっています。

実際、私は建築に興味はなく、黒川記章や丹下健三の名前くらいを知っている程度で、美術館へは行っても誰が建てたのかなんて興味なくひたすら展示作品を観るだけだったんです。

建築家って設計図をひいて建物が建てられるようにするだけだと思っていたのですが、実現させるためにいろんな段階を踏んで成り立っていたのですね。

2020年の東京オリンピックに向けての新国立競技場としてコンペで1位になったザハ・ハディドのデザインですが、当時、メディアでとても取り上げられたので記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか?残念ながら当初の計画より大幅な費用がかかるということで、着工には至りませんでした。わたしは、約4000枚もの設計図が引かれ流線型のデザインをどう可能にするかということを日本の4つの設計会社が協力してチームを立ち上げたことなどまったく知りませんでした。

これは、最後のコーナーに完成予想映像、模型、分厚い何冊もの資料などで紹介されていました。

アート好きの私としては、川喜多煉七郎のドローイングが素敵過ぎて・・この方の模型もすごくって超緻密!なのですが、日本人として初めて海外のコンペに入賞された方だそうです。その作品模型があるのですが、外観と断面図もあって、細かい舞台装置なども考えられており観ていてあきません。

石上純也藤本壮介の作品は、模型が繊細で女子受けしそうな軽やかな街の風や空気を感じます。

現代アート好きなら、断然!荒川修作+マドリンギンズの「橋」です。

模型というような小さな物ではなく、もはやアートの立体作品です。

この方の建物は東京の三鷹や岐阜にもあるので、もしかしたら行かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。なんだか、アスレチックのような・・・黒い丸が襲ってきそうな通れなさそうな「橋」です。

あげれば切りがないのですが、そうグッケンハイム美術館の構想もありました!

ヘルシンキのグッケンハイムを建てるということで、各国の建築家が参加したコンペがあったのですがその案として出された美術館がものすごいんです。

ニューヨークのグッケンハイムは超洗練されたデザインですが、マーク・フォスターゲージが考えた案は、いろんなキャラクターがくっついたそれ自体がオブジェと言えるような・・・現代のガウディのような・・・まあ、インスタ映え間違いなしの迫力満点の建物でした。

また、今回驚いたのは、建築家の未来を見通す力です。

1960年代からの人口問題、働き方を解決する手段として、空中都市や増改築可能な建築物など建築家ってそういう問題まで踏み込んで考えるのかって本当に驚きでした。

「未来都市」・・・あと何年かしたら建っているかもというような建築、都市構想も観ることができす。そうそう、その東京未来都市を思わせるような映像も紹介されていましたね。

作家解説と作品解説も付いているので細かく読んでいくと結構時間かかるのですが、海外の方で芸術学校から建築に行って絵画に行かれたとか・・・けっこういらっしゃいました。なのでやはり芸術的センス、デザイン性も感じられ、なるほどなーって感じです。

建築って住めればいいってもんじゃないんですね。

思いがけず、一日めいっぱい楽しめる展示です。

 

是非、行かれてみてはいかがでしょう。誰かと一緒に行くと違う見方もできて面白いと思います。

 

インポッシブルアーキテクチャ

端的に言えば「不可能な建築」を紹介しています。いわゆる建たなかった建築、通常は「unbuild」,未完の建築と言われますが、いろんな意味で建たなかったという意味で インポッシブルという言葉を使っているそうです。