ヒロシマ鎮まりしものたち マグダレーナ・アバカノビッチ〜子供たちが教えてくれたこと
マグダレーナ・アバカノビッチ
1930年ポーランド生まれ
広島市現代美術館野外彫刻広場に
ブロンズでできた立体が並んでいます。
これは、何でしょう?何に見えますか?
そして、それは何個あるのでしょう?
これは、40個の人の背中です。
実際の人間の背中から型をとって造られたものです。
それぞれ違っているのがわかりますか?
中央に背骨があるのがわかりますか?背骨の下には、お尻のラインが入っているのもありますよね。
前にまわってみると、足の付け根があるのがわかりますね。
この人は、どういう状態なのでしょう。
1945年8月6日に広島に原子爆弾が落とされ、たくさんの人々が亡くなりました。
一瞬で灰になった方もいますが、火傷を負って水を求めて川岸や海で亡くなった方も大勢いらっしゃいます。この作品は、たくさんの方が亡くなった宇品港に向けて置かれています。
少し背中のラインがまるく見えるのですがどうですか?
私には、何だか頭を垂れて祈っているように思えます。
背中の内側の飛び出している杭のようなものは、いったい何を表現しているのでしょう。
幼稚園、小学校の皆さんは、この作品を見た時に、素直に、また無邪気に
「中に座っていい?」と聞いてきます。
ちょうど内側は、体がすっぽり入るような作りになっていて、そこに子供は入れるくらいの大きさになっているのです。ですが、その背中の内側には、飛び出た杭のようなものがあり、あたると痛いし怪我をしそうです。
なぜ、そんなものがあるの?って、最初はわからなかったんですが
子供たちは、「拷問みたい」と答えてくれます。
そうですよね、そのうちその飛び出た杭は、亡くなった方々の苦しみを現しているのではないかと思うようになりました。